あと30日で、他人に戻るふたり
コンビニで数本のお酒とおつまみを買った私たちは、そのまま電車に乗って最寄り駅へ降り立った。


…本当は中村さんが次から次へ買い物カゴへお酒をガンガン入れるものだから、全力で止めたのだ。

「終電までの約束ですよね?」と。


そうしたら、彼はとぼける振りをして慌ててお酒を戻していたのだった。

会社にいる時はただの陽キャみたいな雰囲気の営業マンなのに、今回の件で軽薄さが見えてしまってうまく飲み込めない。


「このへん、夜でもまあいい感じに人は通るんだな」

人通りも車通りもそれなりにある道を歩きながら、八代さんがまともなことを言う。

「そうなんです。そこもポイント高いです。危なくないので」

「……で、部屋は?不具合とか」

「本当になにもないんです、今のところ」


私と八代さんの会話を聞きつけて、中村さんがぶら下げたコンビニの袋をブンブンしながら近づいてきた。

「怪奇現象とかは?」

「だから、ないんですって」

「めっちゃ楽しみー!」

「中村さん、静かにしてくださいね?マンション、けっこう響くので」

「なんで俺だけに言う?」


そんなの、言わなくたって分かるでしょ?

と目で語ってみたら、中村さんはバツが悪そうに肩をすくめた。
私たちの様子を見て、面白そうに八代さんが笑っている。

「お前、完全に穂村の信用消えたな」

「八代に言われたくないね」


冗談混じりに盛り上がっているところで、見慣れたマンションが見えてきた。

「────あ、あそこです」

「えっ?あの白いマンション?」

「はい」

「めちゃくちゃ綺麗じゃん」


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