あと30日で、他人に戻るふたり
やっぱり、そう思うよね。
私も初めて来た時、同じような感想を持ったから分かる。

オートロックの鍵を開けながら、スマホの画面を気にする。


……案の定、大地さんへ送ったメッセージに既読はついていなかった。


エレベーターに乗って『8』を押すと、中村さんがワクワクしたような顔で鏡越しにこちらを見る。

「やっばぁ!八階なのか!眺め良さそう!ベランダ出ていい?」

「だめです」

「穂村ちゃーん。つれないなー」


あっという間にエレベーターは八階へ到着していつもの通路へ出ると、また中村さんが盛大に声を上げた。

「ええっ!内廊下!?すっげぇ!」

「中村さん!何時だと思ってんですか!」

「中村、マジでちゃんとしろって…」

八代さんまで見兼ねて注意してくれている。

当の本人は響いていないからか、「はいはい」と完全に生返事だった。


足音のしないカーペットを踏みながら、通路の奥にある部屋の前に立つ。
鍵を取り出して、いま一度、八代さんたちに念を押す。

「…さっきも言いましたけど、同居人がいるかもしれませんので。その時は、“ちゃんと”してくれますよね?」

「おっけー!」

「適度に飲んで、あと出ていくから大丈夫」


二人がうなずいたのを確認してから、私はそっと玄関の鍵を開けた。


玄関は暗かった。
リビングから漏れている灯りだけが、こちらを少し照らしている程度。

いつもの黒いスニーカーが、雑に脱いであるのを見つけて確信する。

─────あ、大地さん、いる。


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