あと30日で、他人に戻るふたり
でもあとに続いて入ってきた二人は、足元になんて注目するわけもなく。
中村さんに至ってはキョロキョロしている。

「なんか、いい匂いする」

「嗅がないでください!」

靴を一応揃えていたらしい八代さんが、遅れて私についてくる。

「リビングあっち?」

「はい…」


たぶん、いるけど。
どういう状態なのかは分からない。

不安に駆られながらも、リビングのドアを開けた。


その瞬間、後ろから大きな声。

「うわっ!広っ!!!」

…中村さんにさっきお願いした、『静かにしてくださいね』がまったく効いていない。


リビングの真ん中に置いてあるソファに、身動ぎひとつしない大きな塊。

上は半袖Tシャツ、下はスウェット。
顔はよく見えないけど、いつもの大地さんがスマホを片手に持ったまま寝ていた。

こちらに背を向けていたけれど、中村さんの声で寝返りを打つのが見えた。


テレビはつけっぱなしで、ガヤガヤしたお笑い番組かなにかが流れている。


ソファでいつも通りに眠っている姿を見た瞬間、張っていたものが少しだけほどけた。


「あいつ?」

後ろから落ち着いた声がして、それが八代さんだというのはすぐに分かった。

うなずく前に、中村さんがまた声を張る。

「えっ、あの人が!?同居人!?」

「ちょっ…!静かにしてくださいって!!」


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