あと30日で、他人に戻るふたり
立ち上がって初めて分かる。
大地さんの身長の高さ。

見下ろしてくるとかじゃないけれど、なにも言わなくても中村さんたちへ圧を感じさせる目線の違い。

そういうのをあまり気にしたことがなかった。


床に落ちたスマホをひょいと拾った大地さんは、ゆるっとした出で立ちでキッチンへ向かいながらふと足を止める。

彼の視線は一貫して私にだけ向けられている。

「……どれくらいいるの?」


私が伺うように八代さんたちを見やると、彼らはにこりと微笑んだ。

「終電までには帰りますよ」

「一応、そういう予定にしてます!」

「予定じゃないです、約束ですよ!」

私が言い聞かせているというのに、中村さんはもうなんだかどっかりとラグの上に座り始めてしまった。


「よし!飲み直そーぜ。買ってきたのあるし」

「だな。穂村、なんか取り皿とかある?」

「あ、はい。いま出しますね」


ひとまずバッグを置いてキッチンへ向かうと、先に冷蔵庫から水を取り出している大地さんが私に適当なお皿を何枚か渡してきた。

「……ごめんなさい」

小声で謝ると、彼は水を飲みながら「なにが?」と首をかしげる。

「だって、急にこんな展開になっちゃって」

「まあ、仕方ないんじゃない」

「嫌ですよね?」

「……うるさいのは嫌」

正直すぎる返事に、思わず私は目を瞬かせた。

「でも、美月が困るなら追い返せないでしょ」


ああ、ちゃんと私、家に帰ってきたな。
そんなふうに思えた瞬間だった。


いったん取り皿をリビングに置きに行くと、キッチンから声をかけられる。

「美月、コップもいる?」

「あっ、はい。すぐ行きます」

「いいよ、俺持ってく」

コップに氷を入れる音が聞こえてくる。


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