あと30日で、他人に戻るふたり
たぶん予想外だったんだろう、中村さんが釈然としない様子で首をひねる。

「同居人、めっちゃ慣れてるじゃん。思ってたんと違うんだけど」

「そりゃあ、大地さんも普通にここ住んでるので!」

「……ふーん。名前呼びなんだ」

八代さんに不意に指摘されて、おつまみをお皿に出している手が止まりかける。


他人から見たら、私と大地さんの関係は不思議なものに違いない。
“ただの同居人”というには、距離は近いかもしれない。

答えに詰まっていると、大地さんがコップを三つ持ってきた。


「そちらもどうです?飲みません?」

ソファに座ってスマホをいじり始めた大地さんに、八代さんがチューハイの缶を掲げて見せたけれど。
彼はそれを見もせずに

「気分じゃないんで」

と、素っ気なくかわしていた。


中村さんの興味は、完全に大地さんへと向けられていた。
もはや体ごとソファにいる彼の方に居直り、そして変わらないテンションで尋ねる。

「同居人さんって、何の仕事してるんですか?」

「…なんで?」

ソファの背もたれに身を預けて、ペットボトルの水を飲んでいる大地さんの妙な存在感たるや。

そして口癖みたいな「なんで?」を初対面の人にも平気で言えるメンタルの強さも見習いたくなる。


「気になるじゃないっすかー!けっこう身体もデカいし。土木関係とか?」

物怖じしない中村さんは、たぶんアルコールの力も借りているに違いない。

ぐいぐい聞いてくるからか、分かりやすくめんどくさそうにため息をついた大地さんがぼそりとつぶやく。

「IT系」

「えっ、それだけ!?」

「エンジニアって言えば満足?」

「あぁ〜、なるほどね?そんな雰囲気あるかも」


─────大地さん。ちょっと怖いよ。

と、心の中でツッコミながらも、まあ相手が中村さんだからいいかと思ってしまう私も私だ。


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