あと30日で、他人に戻るふたり
ガヤガヤしているテレビが気になってしまって、スマホを見ている彼に

「テレビ見てないなら、消してもいいですか?」

とリモコンに手を伸ばした。

「うん、いいよ」

と、こちらを見もしないで適当な返事。


「……なんか、ずいぶんお互い分かってる感あるね」

八代さんがここで初めて私をじっと見ていることに気づいた。
なにかを察しているような、探っているような、そんな目で見ていた。

三週間近く同居していたら、こうなるものじゃないのか?
…と、私はここで“普通”が分からなくなる。


「そう…ですかね?」

曖昧に返したのが気になったらしく、中村さんがコップのお酒を飲み干してからニヤニヤとした顔で私を小突いてきた。

「穂村ちゃーん。もしかして寝る部屋とか一緒だったりする?まさかまさか?」

……この人、ここに来てもまだ悪ノリするの?
半ば呆れながらも、

「そんなわけないですよ。なに言ってんですか?」

と言い返していたら。


後ろから冷めたような声が飛んできた。


「そのへん、会社の飲み会で聞くこと?」

低くて静かな、大地さんの声。

一瞬、その場が沈黙に包まれる。
やっとそこで踏み込みすぎたと分かったのか、中村さんが「やだなぁ」とヘラっと笑った。

「分かってますよぉ。あえて聞いただけじゃないっすかぁ」

「中村、そのへんにしとけって」

八代さんは苦笑いしながら、缶を軽く振った。

「さすがにセクハラで怒られるぞ」

「はーい」


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