あと30日で、他人に戻るふたり
ちょうど中村さんが落ち着いたところで、次は八代さんが半分後ろを見て大地さんの姿を確認し始めた。

「でも珍しいですよね。男女でルームシェアって」


どうしてこの二人、そんなに大地さんに絡むんだろう。
まったく理解できなくて、私はコップに入ったチューハイをこくんとひと口飲む。

ちゃんと八代さんには事情を説明しているはずだから、だいたいのことは知っているはずなのに。
わざわざ大地さんに聞くなんて。


大地さんはソファの上で足を組み直すと、スマホから視線を外して八代さんに目を向ける。

なんて返すのかと思っていたら、それは予想外のものだった。

「まあ、色々あって」


適当というより、曖昧というより、ただ細かく説明しない。
それが無駄だと判断しているような。
そういうスタンスなんだと思った。


八代さんはバッサリ切ってくる大地さんに食い下がる。

「そうは言っても、知らない人と同居って大変じゃないですか?生活リズムも違うし、恋人でもないのに」

「ねー。だよねー。穂村ちゃん、可愛いしな」

「中村、マジで黙ってろ」

「────あのさ」


大地さんが、スマホをついに置いた。

「あんたら、何しに来たの?」


さっき以上に空気が一段と冷える。
それはそれは、やけに重くてずしんとした雰囲気へと。


「飲みに来たんなら、勝手に飲んでてよ。俺に構わないで。ここ、美月んちだけど。俺んちでもあるから」


しん、としたリビングで、さっきテレビを消さなきゃよかった、と後悔してしまった。

静かすぎて、もう空気を戻せない。

なにか探さなきゃ。
それだけがぐるぐると頭の中を駆け巡って、咄嗟に手元にあった未開封のナッツを手に取った。


「お、おつまみ追加します!飲んでください!」

「……あー、ありがとう。穂村ちゃん、さすが気が利くなあ」


中村さんは反応してくれたけれど。
そこから先、八代さんはあまりしゃべらなかった。



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