あと30日で、他人に戻るふたり
買い込んできたお酒もおつまみも残りわずかになってきた頃。

「……そろそろ、帰るか」

ぽつりとそう言ったのは、八代さんだった。

「もうちょいで終電じゃない?」

「うわー、マジだ。あっという間だったなー」


帰り支度を始めた二人を見て、どこかほっとする。

テーブルに広げたお皿やコップは、当たり前に片付けようとしないあたりたぶん早く帰りたいのだろう。

「帰りの道、分かりますか?大丈夫ですか?」


玄関まで二人を送りながら聞くと、八代さんがここでやっといつもの笑顔になった。

「駅まで一本道だったじゃん。そこまで酔ってないから大丈夫」

「大したおもてなしもできなくてすみません」

「急だったし、気にしないで」


靴を履いたあと、リビングには聞こえない声で中村さんが身を屈めてひそっと私に耳打ちする。

「同居人、怖すぎるって!」

「たぶん寝不足なのかもしれないです!ごめんなさい」

絶対、そうじゃないと思うけど。
取り繕うにはこれくらいの言い訳しか思い浮かばなかった。

「じゃ、また月曜日にね」

「はい。気をつけて帰ってください」

「お疲れ様ー」


バタン、とドアが閉じられて、途端に肩の力が抜けた。


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