あと30日で、他人に戻るふたり
リビングに戻るのが怖い。
大地さん、どんな顔してるんだろう。

おそるおそるリビングのドアを開けると。

ずっこけそうになった。


ダラーッとソファに寝そべって消したはずのテレビもつけて、私たちが残したおつまみを普通に食べている。


「……もぉーーー。大地さーーーん」

こっちの心配をよそに、通常運転すぎて笑いが込み上げてしまった。

「あんなしょーもないやつらと飲んで疲れたでしょ。飲み直したら?」

「一応、先輩なんですよ…」

「クソみたいだな」

シンプルイズベストな感想に、言い返す言葉もない。


「大地さん、怒ってましたよね?」

テーブルの上を片付けながら聞いてみると、彼はなんでもないような顔で「いや?」と否定する。

「なに言っても通じなそうだったから、はっきり言っただけ」

「はぁ……、死ぬかと思った」

「───あれ?それ…」

片付けている私の足元を見て、大地さんが身体を起こした。


何事かとテーブルの下を見ると、どこかで見たようなスマホが落ちている。
グレーのケースに入ったスマホ。

「……あっ!八代さんの社用携帯だ!」

「月曜に渡して間に合う?」

「うわー、どうだろう。営業は困るかも…」

スマホを手に取って、迷わず立ち上がった。


「今まだ駅に向かってる途中だと思うんで、追いかけたら間に合うはずです!行ってきます!」

リビングを出ようとしたら、後ろに気配。

振り返ると、大地さんも一緒になって行こうとしているのかパーカーを羽織っていた。

えっ、一緒に来るの?

と思ったけど。
急いでいるから、そんなのを聞いている余裕もない。


ふたりで慌ただしくエレベーターを目指した。


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