あと30日で、他人に戻るふたり
朝食のような昼食のような、おしゃれに言えば軽めのブランチを済ませた私は、だいぶ気持ちが満たされてキッチンで洗い物をしていた。


そういえば起きてから鏡も見てないけれど、ひどい顔だったらどうしよう。

今さらながらそんなことを心配していたら、リビングから大地さんの声が聞こえた。

「もうちょいしてから出る?」

「え?」

なんのことか分からなくて、水道を止めて聞き返す。

カウンターの向こうにいる彼が、パソコンを閉じてソファに座り直すのが見えた。


「食べ歩き、行くんでしょ」

「────はっ!!!!!」


思いがけない言葉に、変な声が出てしまった。

「なに、その反応」

「いや、だって、絶対忘れてると思ってた!」

「失礼だな。言い出したの美月じゃん」

「それはそうなんですけど!」


だから、彼はちゃんと寝ぐせも直して、ちゃんと着替えてたんだ。

私が起きるのを待っていて、待つのも暇だからとパンを買いに行ったり仕事をしていたわけだ。

思えば思うほど、嬉しい気持ちと申し訳ない気持ちと、とてつもないやさしい気持ちが溢れて。


「十分…いや五分で準備してきます!」

と猛ダッシュで洗面所へ駆け出した。


「あー、いいよー。全然急いでないから」

「だめっ!急ぎます!」

「……ははっ」


絶対、最後らへん慌ててる私のこと笑ったな。

それでも、自分の気持ちはもう見て見ぬふりはできなかった。




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