あと30日で、他人に戻るふたり
少し歩いたところで、ものすごい行列をなしているお店を見つけた。

どうやら、老舗の揚げ物のお店らしい。
出てくる人達は、手にコロッケのようなものを手にしていたり、パックにたくさん入った袋をぶら下げていたりする。


「うわ、並んでる」

「人気なんじゃない?」

「こういうの並びたくなるタイプです」

だろうね、と隣でまるで見透かしたように言われて、それでもなんだか嫌ではない。


のぼりには『爆弾!メンチカツ!』の文字。

「メンチカツ!食べましょう」

一発目はこれだ!と決めてふたりで並んだ。


「さっきサンドイッチ食べたのに、お腹空いてきました」

「俺も」

そんなことを話しているうちに、回転率がいいのかどんどん進んでいく。
もちろん私たちの後ろにも、瞬く間にお客さんが並ぶ。

本当に人気店のようだ。


「……待って、大地さん」

お店の先頭が見えてきたあたりで、私はふと気づいて彼の肩を叩く。

別な方向を見ていた彼が「ん?」とこちらを向いたので、急いで指さした。

「メンチカツが!めちゃくちゃ大きい!」

「…でっか!」

さすがに大きくて、あののぼりが嘘ではないことをここで知る。
『爆弾!メンチカツ!』これは、そういうこと。


「これだけでお腹いっぱいになっちゃうかな…。色んなもの食べ歩きしたかったけど」

私がつぶやくと、大地さんが当たり前みたいに

「別に半分こすればよくない?」

と笑う。

「ひとつだけ買お。さっきのなんかデカいせんべいも食べたいでしょ」

「……はい」


破壊力の強さといったら。
口にはしなかったけれど、とんでもないな、この人。

私が戸惑っているのも知らず、彼はやっとたどり着いた先頭にやたら嬉しそうにしていた。


< 272 / 403 >

この作品をシェア

pagetop