あと30日で、他人に戻るふたり
「どうしよう、甘いの食べたくなってきた」

メンチカツがなくなりそうなので、次の食べ物をどうしようか考えているうちにハッと我に返る。

「なんか私…、食いしん坊っぽくないですか?」


一拍、私と彼の間に沈黙が訪れる。
大地さんはレモネードを飲みながらしばし私を見たあと、首をかしげた。

「え?食いしん坊でしょ?」

「あー…、もうそういう認識で?」

「これは──なんて言えば正解?」

食いしん坊認定されたのが恥ずかしいので、それをごまかすみたいに残りのメンチカツをぱくっと食べる。


「たい焼き、ミニドーナツ、チョコバナナ…、色々あるよ」

目についたお店の名前を隣で読み上げられ、誘惑が多すぎてつい顔をしかめてしまった。

「くぅっ…選べない!」

「屋台みたいだな」


そう言いながら、大地さんはひとつのお店へと向かっている。
そこは、ミニドーナツのお店。

「ドーナツ好きなんですか?」

あまりにも普通に来たので尋ねると、彼はすぐに首を振った。

「今ちょうどお客さんいないし、すぐ出してくれそうじゃん」

「ここでも効率…!」


呆気にとられていると、大地さんはさっさとお店に入って何味にするか物色している。

お店にはたぶん大地さんと同じくらいの歳の男性店員がいて、にこやかな笑顔で話しかけてきた。

「お兄さん、なににします?」

「うーん、人気なのどれですか?」

「人気なのはシンプルなプレーンですけど。自分はこっちのミックスがオススメです!全部の味入ってるんで」

「じゃ、それで。ひと袋ください」


早すぎる決断に、こっちが困惑する。
そしてまた買い上げたドーナツの袋を持たされ、その間に会計を済ませる素早さ。

この人に、迷いとかはないんだろうか。


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