あと30日で、他人に戻るふたり
私たちのやり取りを見ていたらしい一回りくらい年上の女性店員が、自然に声をかけてきた。

「サンダルをお探しですか?」

「あっ、はい」

反射的に私が返事をすると、女性は感じのいい微笑みをこちらに向けてくる。

「ご希望のデザインは──ないんですよね?」


どうやら会話は全部聞かれていたらしい。

それもまたちょっと気恥しいところではあるけれど、私は大地さんを小突いて答えを要求する。
それに気づいて、彼がやっとうなずいた。

「強いて言うなら、歩きやすければ…」

「なるほどー。見たところ、わりと足のサイズ大きい感じしますけど。何センチですか?」

「……たぶん、二十八とか二十九とか」

「え!すごっ!でか!」

店員さんより先に反応してしまったのは、もちろん私だ。


「それだとデザイン限られてきますね…。ちょっと在庫見てきます」

そう言って奥に消えていった店員さんを見送ったあと、ふと隣に立つ彼を見上げる。

この身長なら、そのくらいの足のサイズはありえるものなのか。
とんでもなく高身長で目立つわけじゃないけれど、でもちゃんと目を引く。

思い出したくはないけど、昨日も八代さんたちに見えない圧をかけていたように感じたのは、彼らを見下ろしていた部分もある。


「……俺、この店で浮いてない?」

店内がほぼ女性客しかいない状況で、大地さんは耐えられないのかミニドーナツをさっきから食べ続けている。
たぶん、そろそろ中は空っぽだ。

そんな光景が新鮮で、笑いながら「大丈夫ですよ」と返す。


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