あと30日で、他人に戻るふたり
「お待たせしましたー!種類は少ないですけど、全部持ってきました」

少しして店員さんが戻ってきて、五足ほどサンダルを抱えてきた。

サイズ違いや色違いで、デザインは二種類。

どれもスポーツサンダルみたいな感じの、まさに“歩きやすさ”重視のものだった。


「全部、履いてください」

私がそう言うと、彼は初めて戸惑いの表情を浮かべた。

「全部?」

「はい。全部」

ここは、言い切る。
絶対に、全部履かないとサイズ感も似合うかどうかも分からないから。

私の視線に観念したみたいに彼はうなずく。

「……分かった」


この会話を見守っていた店員さんが素早く簡易的な椅子を取り出す。

「いったんどうぞ、座ってください」

「なんで?」

店員さんにではなく、彼はなぜか私に聞いてくる。

向こうでその店員さんが笑いをこらえてるのがものすごくよく見えた。
私まで笑ってしまうと、彼に申し訳ない。

なるべくいつもの声で諭す。

「サンダルですから、靴下脱がないと」

「……あー、なるほど」


納得したようで、やっと大地さんは椅子に腰かけた。


いったん出された五足のサンダルを、ひたすら全部試着する。
普段スニーカー姿しか見ていないので、素足の彼はまた印象が違って見えた。

私が内心ドキドキしているのに、彼はずっと低音のままだった。

「……どれも一緒に見える」

心外な大地さんの感想に、すぐさま否定する。

「違います!全然違います!」

「そう?」


はい!と力強くうなずいた私は、二種類のサンダルで迷う。

「こっちのデザインの方が足がきれいに見えますね…。サイズ感どうです?」

「二十九はちょっとカパカパする」

「じゃ、二十八にしましょう。歩きやすそうなのはこっちなんですよねぇ」

あっちやこっちやと履かせて、また違うのを履かせる。
彼はもうなにも言ってこない。

言う通りに全部履いてくれる。たぶん、抵抗するのを諦めたんだと思う。

何回も履かせては全体を見て、悩みに悩んでしまう。


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