あと30日で、他人に戻るふたり
「いやー。カーキより黒の方が服とか合わせやすいですよね。大地さん、モノトーンって感じしますし」
「黒だと迷わないってのはある」
「ですよね。…うーん、やっぱりこっちですかね。すごく似合ってるし」
「……なんか、」
ひとりでブツブツ言っていたら、大地さんがふっと言いかける。
「…なんですか?」
「……いや、なんでもない」
濁されたことは、あまり気にならなかった。
そんなことよりもサンダルを決める方が大事。
私はようやく二つのサンダルのうち、ひとつを手に取る。
「よし。決めました!絶対こっちです」
「そんな断言されると怖い」
「似合ってましたもん」
「自分では分かんない。なんでもいい」
またそんなこと言う。
せっかくのサンダルなのに、と言いかけたら。
大地さんが店員さんに声をかけた。
「あの、これこのまま履いていきたいので。値札切ってもらっていいですか?」
「あっ、いいですよー」
店員さんは彼がこれまで履いていたスニーカーを入れる袋を準備してくれて、値札を切ったり会計に動いたりで忙しなく対応してくれた。
「……ちゃんと、気に入ってくれました?」
「うん。だから履いていこうと思って」
「よかった」
新しいサンダルを履いて、足元が涼しげになった彼はちょっと満足げな顔をしていた。
会計を終えたあと、ずっと一緒に付き添ってくれた店員さんが店先まで見送りに来てくれた。
私は彼女にぺこりと頭を下げる。
「すみませんでした、長々と…」
「いえいえ」
店員さんはにこっと笑うと、私ではなく隣に立つ大地さんに視線を向けた。
「彼氏さん、よかったですね。サンダル選んでもらって。素敵な彼女じゃないですか」
「……あー」
───あ、この返事をいまここで聞くの、怖い。
思わず身をすくめていたら。
「はい。ありがとうございます」
あっさりと、そう言われて気が抜けた。
「とんでもないです。こちらこそありがとうございました。またふたりでお越しください」
「はい」
否定、しなかった。
その事実だけを残して、私たちは歩き出す。
まあ、あそこで「違います」とか「そういうんじゃないです」とか言っても、めんどくさいから。
きっとそれだけなんだとは思う。
それは分かってる。
でも、どうしてか隣をちゃんと見れなかった。
••┈┈┈┈••
「黒だと迷わないってのはある」
「ですよね。…うーん、やっぱりこっちですかね。すごく似合ってるし」
「……なんか、」
ひとりでブツブツ言っていたら、大地さんがふっと言いかける。
「…なんですか?」
「……いや、なんでもない」
濁されたことは、あまり気にならなかった。
そんなことよりもサンダルを決める方が大事。
私はようやく二つのサンダルのうち、ひとつを手に取る。
「よし。決めました!絶対こっちです」
「そんな断言されると怖い」
「似合ってましたもん」
「自分では分かんない。なんでもいい」
またそんなこと言う。
せっかくのサンダルなのに、と言いかけたら。
大地さんが店員さんに声をかけた。
「あの、これこのまま履いていきたいので。値札切ってもらっていいですか?」
「あっ、いいですよー」
店員さんは彼がこれまで履いていたスニーカーを入れる袋を準備してくれて、値札を切ったり会計に動いたりで忙しなく対応してくれた。
「……ちゃんと、気に入ってくれました?」
「うん。だから履いていこうと思って」
「よかった」
新しいサンダルを履いて、足元が涼しげになった彼はちょっと満足げな顔をしていた。
会計を終えたあと、ずっと一緒に付き添ってくれた店員さんが店先まで見送りに来てくれた。
私は彼女にぺこりと頭を下げる。
「すみませんでした、長々と…」
「いえいえ」
店員さんはにこっと笑うと、私ではなく隣に立つ大地さんに視線を向けた。
「彼氏さん、よかったですね。サンダル選んでもらって。素敵な彼女じゃないですか」
「……あー」
───あ、この返事をいまここで聞くの、怖い。
思わず身をすくめていたら。
「はい。ありがとうございます」
あっさりと、そう言われて気が抜けた。
「とんでもないです。こちらこそありがとうございました。またふたりでお越しください」
「はい」
否定、しなかった。
その事実だけを残して、私たちは歩き出す。
まあ、あそこで「違います」とか「そういうんじゃないです」とか言っても、めんどくさいから。
きっとそれだけなんだとは思う。
それは分かってる。
でも、どうしてか隣をちゃんと見れなかった。
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