あと30日で、他人に戻るふたり

21日目 気にしないで

月曜日が来てしまった。
来てほしくなかったけれど、ちゃんと向き合わなければいけない週の始まり。

土曜日の夜の出来事は、いまだにどこか頭の中にこびりついて離れてはいなかった。


せっかく昨日は楽しかったのに。
今日という一日を、頑張らないといけなくなった。


先に洗面所を使っていたものの、水を出しっぱなしにしていたことに遅れて気づいて慌てて止める。

顔を洗ったのに、全然すっきりしないのはなんでだろう。


はぁ、とため息をついてから温めていたヘアアイロンの電源をいったん消した。

今日は髪の毛はいいや、とコードをくるくるまとめる。
くしで梳かすだけにして、洗面所をあとにした。


「大地さん、洗面所いいですよ」

「あぁ、うん」


キッチンにいる彼に声をかけると、返事だけは聞こえた。

そのまま寝室で着替えようと思っていたのに、コーヒーの香りがするのでついつい立ち寄ってしまう。


「コーヒー…」

ぽろっとつぶやくと、大地さんがスウェット姿でコーヒーをコップについだあとこちらを見やった。

「飲む?」

「はい」

「淹れとくよ。着替えてきたら?」

「ありがとうございます」


こんな会話、初日に想像できていただろうか?
いや、そんなのは無理だった。

この人とは一生タイミングやリズムが合わないんだろうな、って思いながら過ごしていた最初の頃。


「あ、美月」

私が着替えに行こうとしたら、呼び止められて振り返る。

「パン、テーブルに置いてあるから」

えっ、とテーブルを確認しているうちに、大地さんはもう洗面所へと行ってしまった。


テーブルの上には、焼いてないそのままの食パン。
昨日の教訓を生かして、サンドイッチにはしなかったらしい。

でも、どんな形であれ私の分までちゃんと置いてくれていることが嬉しかった。


「…ありがとうございます」

噛み締めるみたいに誰もいないキッチンに言い残して、私は寝室へと向かった。


< 282 / 403 >

この作品をシェア

pagetop