あと30日で、他人に戻るふたり
会議室のドアを開けると、すでに半分以上の席が埋まっていた。

壁際のモニターには『武蔵小金井西口再開発案件 定例進捗会議』と表示されている。


ドアを押し開けようとして、どくんと胸が鳴った。

……怖い。
けど、ここで踏ん張れなければ、相手が思っていた通りになる。
それが嫌だった。

絶対に仕事だけはしっかりやる。


そう決めて、ドアを開けた。


「おはようございます」

できるだけいつも通りの声を出したつもりだった。


「あ、おはよー穂村さん」

「おー、おはようございます」

何人かが顔を上げて返事をくれる。

その中に、八代さんもいた。


彼は他の人たちと変わらない自然さでこちらを見て、軽く笑う。いつもの、整った顔で。

「おはよう、穂村」


……普通だ。

土曜日の夜なんて、最初から存在していなかったみたいに。


「おはようございます」

私もいつもの温度で返して、空いていた席へ急いで座り、ノートパソコンを開いた。

────たぶん、ちゃんと声を出せていたはずだ。
周りの人達にも気づかれていないと思う。


ちょうどそのタイミングで、前方にいた野崎課長が資料をめくる。

「じゃあ、始めるか。武蔵小金井の件、先週末で現地確認もひと通り終わったから、今日は導線とテナント配置の修正案を詰めたい」


モニターに映し出された資料には、駅前の商業エリア図面。

飲食ゾーン、生活雑貨、スーパー、イベントスペース。 色分けされた導線計画が細かく表示されている。


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