あと30日で、他人に戻るふたり
……たしかに、私はそう言った。
“多少は”大きめでもいいと。

その加減をちゃんと伝えるべきだったのに、気がついた時にはもう遅かった。

「でかっ!」

切った野菜をザルに入れてもらっていたので、たまたま見てみたら。
全部が大きすぎて、どうやったら火が通るのかと問いただしたくなるほどだった。


「ちょっと、大きすぎ!」

「なんで?大きめでいいって言ったじゃん」

「言いましたけど!ズッキーニなんて、どんだけ大きいんですか!?」

「へぇー、これズッキーニっていう名前なんだ。初めて知った」

────いま話してるのそれじゃねぇ!


「せめてじゃがいもと人参はもう少し小さくしてください!」

「めんどくさい。早く煮込んでよ」

「半分にするだけですって!」


言い合っているうちに、狭いキッチンで体がぶつかる。

「いてっ」

「すみません!」

「もう鍋に入れていい?ザルがパンパン」


待って!と言う前に、ザーーッと大地さんが鍋にザルの中の野菜をぶち込んでしまった。

雑さがすごい。分かってはいたけれど、本当に雑すぎて笑いしか出てこない。

「もう!順番あるのに!」

「うそ?ごめん」

まったく悪気がないのが分かるので、責めようがない。

もういいや、と諦めて蓋を閉めた。


「……知りませんよ、硬くても」

私がそう言うと、彼はまるで自分のせいではなく誰かさんのせいみたいにうなずく。

「ちょっとくらい硬くても、頑張って噛めばよくない?仕方ないよ」

「私のせいみたいに言ってません?」

「ふたりの責任、にしよう」

「……ま、それならいっか」


さっきまでの月曜日の重さが、鍋の湯気と一緒にどこかへ飛んでいく。

気づけば、会社で張っていた気持ちは、すっかりほどけていた。




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