あと30日で、他人に戻るふたり
たぶん、出来上がったであろうカレーをかき混ぜる。

けっこうな量があるので、隣で大地さんが「明日もカレー食べれそうだね」とやけに嬉しそうに言っている。


「ところどころ、火が通ってなかったりしたらすみません」

「それは頑張って噛む約束じゃん?」

「歯が欠けたらどうするんですかー」

私がムキになっていると、大げさだな、と彼は笑っていた。


炊飯器を開けて、お米をしゃもじでかき混ぜようとしてふと手を止める。

「……ん?」

「どうした?」

もうすでにお皿を手に持ってスタンバイしている彼には申し訳ないが、お米の炊き上がりに問題がありそう!

「大地さん…、水の量、ちゃんと計りました?」

「……たぶん?」

その“たぶん”、さっきも聞いた。

「内側の線を見るんですよ?ちょっと水多かったんじゃないですか?べちゃべちゃ…」

しゃもじを入れる度に、水っぽい音がする。
絶対その音を聞いているはずなのに、彼は間違いを認めようとしない。

「いや、線は見た」

「ほんとに?」

「……たぶん?」


────もういいや。これを思うのも、今日二回目。

私は水っぽいお米を二つのお皿に乗せて、その上にカレーをかける。

混ぜて食べればいける気がしてきた。


「めちゃくちゃいい匂いだ」

一方の大地さんは、完全に大成功の顔をしている。

いそいそとカレーをテーブルに運んで、冷蔵庫からは水もちゃんと準備してくれた。

「おかわりしてもいいの?」

「それはもちろん。どうぞ」


私の脳内に、『好物、カレーライス』とインプットされてしまった。


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