あと30日で、他人に戻るふたり
家に帰ると、まだ大地さんは帰っていなかった。


昨日はたまたま帰りが早かっただけかもしれないし、今日は遅くなるのかもしれない。
連絡がないのはいつものことで、これまでもそれぞれ過ごしてきた。

でもここ最近はなんとなく、ずっと一緒にご飯を食べてきたように思う。


……もう一緒に暮らせる日も少ないし、色々と期待しすぎるのもよくないな。

そんなことを思いながら、炊飯器にお米をセットする。

昨日のべちゃべちゃになった水っぽいご飯を思い出して、勝手に口元が緩んだ。


冷蔵庫から、前日の余ったカレーを出して鍋で温めていると、玄関から物音が聞こえた。

すぐに、見慣れた姿がリビングに現れる。

「ただいま」

「おっ…、おかえりなさい」

「なにその顔」


外が暑かったからか、大地さんは羽織っていたシャツを腕にかけて半袖だった。

私の顔を見て、ふっと吹き出しそうになっているのでちょっとそれが不満に感じる。

「そりゃあ、びっくりしますよ」

「なんで?」

「最近、帰り早くないですか?」


なにも特別なことを言ったわけじゃない。

ただ本当にそう思ったから言っただけの深い意味のない感想みたいな言葉だったのに、大地さんは鞄をテーブル置いたまま動かなかった。


どうして私がそれを聞いたのか、まるで答えを探すように。考え込むみたいに。


「え……?そう?」

私に言われるまで気づいてなかったみたいな反応を見せたので、それにも驚かされる。

自覚がないことが不思議だ。

「そうですよ。でも、仕事ハードそうですし。少しでも休める時間は長い方がいいですよね」

「まあ、そうだね」


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