あと30日で、他人に戻るふたり
「サンドイッチも、パンの原型ないくらい潰すし。できもしないのに、べちゃべちゃのご飯炊いてくれたり」

「あとは?」

「あと?…二日目のカレーにコロッケ買ってきてくれたり、私が彼の寝床のソファで寝ちゃっても怒らないし」

「……あれ、私、付き合いたての彼氏の話聞かされてる?」

「────は?」


私が言い返すよりも先に、優奈が畳みかけてくる。

「私が前に美月に言った、“どうでもいいのことの積み重ねで恋は育つ”って覚えてる?それ、同居人とやっちゃってんじゃん」

「い、いや私が話してるのはそれじゃなくて」

「あー、美月はもうその人のこと好きなのか」

「そ、それは…」

そこに関しては本当にそうなのでまったく言い返す余地もない。

言い淀んでいると、彼女はフフッと楽しそうに笑った。
なるほどね、と肩をすくめている。

「美月が言ってた、ちょっといいかなって思ってる人は、同居人のことだったのか」

「……うん」

「もー、ずっと誰なのか気になってたんだからね?」


言われてみれば、少し前にそんな話を彼女にしたんだった。
思い起こすとだいぶ恥ずかしい。

自分の思いを認めるのは、勇気がいる。
こうして誰かに話すことは、もっと勇気がいる。

だからこの気持ちを大地さんに言える日は、来ない気がした。


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