あと30日で、他人に戻るふたり
エビを食べる手が止まったことに気づいたのか、優奈が話を進めていく。

「美月は好きでも、相手はどうなの?」

もう彼女のポキライスはけっこう減っている。
対して私のガーリックシュリンプはまだかなり残っていた。

大ぶりのエビをフォークでつつきながら、いつも一定の温度を崩さない大地さんの顔や言動を思い浮かべる。


「……分かんない。たぶん、何も考えてないと思う」

「話聞いてるだけだと両思いぽくない?」

「ううん。会えば分かる」

「会う予定ないもんなあ」


何気なく優奈が言ったその言葉がちょっとおかしくて、思わず吹き出す。

「……そうだね。もうすぐ出ていっちゃうし」


やっと再び食べ始めた私に、優奈がなんとなく伺うような表情を浮かべて首をかしげる。

「……出ていくの、止めないの?」

「……淡々と論破してきそうなんだもん」

「なんだそれ。どんな男よ」

「だから会えば分かるんだって」

「会う予定ないんだって」

繰り返してばかりの会話に、二人で笑い合った。


でも、ひとしきり笑ったあと。
優奈がふっと珍しく真面目な顔になる。

「…でもさ、美月。後悔するくらいなら、ちゃんと聞いた方がいいと思うよ」


窓の外では、昼休みを終えた人たちが急いでいるみたいに足早に横断歩道を渡っていく。

その流れをぼんやり眺めながら、私は小さく息を吐いた。


────聞けるなら、こんなに苦労してない。

そんな言葉だけが、胸の奥に静かに沈んでいった。




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