あと30日で、他人に戻るふたり
思わず言葉に詰まる。
照れるというよりも、戸惑いに近い感情。

そんなふうに見られていたこと自体、少し意外だった。

「この前まで、“こここうした方がいいかも”ってどんどん出てたし。でも今日ちょっとぼーっとしてるなって」

竹中さんの指摘が図星すぎて、返事に困る。

まさか、“同居人がもうすぐ出ていくかもしれない現実”を急に突きつけられて集中できません、なんて言えるわけもない。


「……ちょっと、寝不足なのかもしれないです」

苦し紛れになんとかそれだけ返すと、竹中さんは「あー」と納得したみたいにうなずいた。

「暑くなってきたしねぇ。ちゃんと寝ないと頭回らなくなるよ」

彼はそれ以上の余計なことは聞かない。
でも、気づいてないわけでもない。

そういう距離感が、この人は本当にうまいと思う。


「無理しすぎないようにね」

「……はい。ありがとうございます」

竹中さんはふと笑って軽く手を上げて、そのまま開発部のフロアへ戻っていった。


私は改めてモニターへ視線を戻す。

画面の中には、“住宅エリア周辺の住環境整備案”という文字。

“住環境”。
その単語だけで、また頭の中に大地さんの姿が浮かぶ。


───もうすぐ、出ていく。

マウスを握る手に、少しだけ力が入った。




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