あと30日で、他人に戻るふたり
この日の大地さんの帰りは、そこまで早くはなかった。

前日に「最近の帰りが早い」とか言ってしまったからじゃないかとか、色々ごちゃごちゃ考えたりもしたけれど。

彼がそんなことを気にするタイプではないことは、もう重々承知だ。
だから、こちらも気にしないようにつとめた。


たくさんのレタスと薄く切った玉ねぎ、パプリカやトマトをお皿に盛りながら、時計をちらちらと見る。

“気にしないように”なんて思ってる時点で、気にしてるのは分かってる。
私の方が、何にとは言わないが。たぶん負けている。


「ただいまー」

豚バラ肉を茹でている時に、聞き慣れた声が聞こえて振り向く。

仕事に行く時の、だいたいいつものスタイル。
白いトップスに黒いパンツ。

今日は外が暑かったからか、だるそうに帰ってきた。


「おかえりなさい」

「まだ梅雨明けてないって嘘じゃないの…」

「ずっと晴れてますよね」

部屋にエアコンは入れているけれど、それでも彼は暑いらしい。


いったんソファに座ってグダッと溶けたあと、はっと思い出したみたいに起き上がるのが見えた。

「なんか、する?」

そのたったひと言が、彼らしくて笑える。


疲れてるはずなのに、私だけに任せようとしないスタンスは、いつからだったんだろう。
もう遠い昔のことみたいで、よく思い出せなくなっている。

「今日はね、もう出来上がります。すごく簡単にしちゃったので」

「へぇ。なに?」

「冷しゃぶです」

「あー、それ身体が喜ぶやつだ」


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