あと30日で、他人に戻るふたり
その日の仕事は、午前中に軽い打ち合わせとちょっと大きめの会議。


フロアに戻ってからは、慌ただしく溜まっていた細々とした調整作業に追われていた。

お昼休みも削って、はっと時間を確認した時にはだいぶ過ぎてしまっていた。

下にあるコンビニで軽食でも買って、適当に済ませようと立ち上がった時。


「穂村」

と、後ろから声をかけられた。

この数日、二人きりになるのを避けていた相手だから分かる。
八代さんだ。


お財布を持ったまま、すぐには振り向けなくて一瞬迷う。

でも────逃げちゃだめ。

私はひと呼吸置いてから、ゆっくりと後ろを向いた。


八代さんはやっぱりちゃんと“完璧”に見える彼で。
誰もが憧れるのも納得の出で立ちで、そこに立っている。

社内でも目を引く存在だし、彼に憧れる女性社員が多くいるのも本当に当然と思えるほどの。

その彼が、たぶん身構えている様子で私のところまで来たんだと思うとそれもなんだか変な心地がした。


「昼飯、まだだよな?ちょっと外行かない?」

「……はい」

ちゃんと整理がついたわけじゃない。
それでも、このまま避け続けるのは良くないのも分かっている。

私は八代さんに連れられる形で、一緒に会社の外へと繰り出した。



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