あと30日で、他人に戻るふたり
小さなモニターに図面を映して、並んで座る。

竹中さんは手に持っていたタブレットを片手に、資料をスクロールしながら「あー」と小さく唸った。


「やっぱ休日にイベントやるとなると、この辺がより一層詰まりそうなんだよね」

「そうですね。ベビーカー同士とかいう問題じゃなくなってきますね」

少し考えて、イメージを膨らませる。

もしもこれで、雨が降っていたとしたら。
土日で人通りが平日よりもさらに混み合うとしたら。

イベントも増えれば集客も増えるし、どのくらいの人流がここに溢れるだろう。


「家族連れで手を繋いでたりすると、歩く速度も遅かったり、動きもゆっくりになりそうなので…。色んなパターンを合わせて考えると、危ないかもしれないです」

私は身を乗り出して資料と照らし合わせつつ、モニターの一角を指差す。

「このタイル、雨の日だと滑りやすそうで。子ども連れてる人って、たぶん急いで屋根のある方行くので」

「あ、ほんとだ。ちょっとここも考え直すか…」

竹中さんはすぐにうなずきながら、資料へメモを書き込んでいった。

「じゃあこの辺、植栽ちょっと削って動線広げようか?」

「いいと思います。あと、ここに簡易ベンチ置けると助かるかもです。濡れた荷物整理したりとか」

「いいねぇ」


話しているうちに、少しずつ頭が仕事へ戻っていく。

そういえば私は、こういう時間が好きだった。
図面の向こう側にいる“誰か”を想像しながら考えるのが。


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