あと30日で、他人に戻るふたり
大地さんは先に帰宅していた。
玄関に乱雑に脱ぎ捨てられたスニーカー。
リビングから暗い廊下に漏れる明かり。
嬉しいのか切ないのか、もうよく分からない。
────いや、たぶん私、ちゃんとまだ“嬉しい”。
「おかえり」
私がドアを開けるとすぐに、ソファに座る大地さんに先に声をかけられた。
今日も彼が帰ってきたっていうだけで、どこか安心してしまう自分がここにいる。
「ただいま」
変わらない声で返して、いったん寝室へバッグを置くとそのままキッチンに向かう。
その途中で、テーブルに広げられている書類が視界に入って足が止まりかける。
それを、なんとか気にしないように急ぎ足で通り過ぎた。
「今日ちょっと見なきゃいけない書類あってさ、」
なにも聞いてないのに、あちらから声が飛んでくる。
…うん、知ってる。
きっと急ぎでまとめなくちゃいけない書類だよね。
だから、気にも留めてないような反応をした。
「大丈夫ですよ。簡単に作っちゃいますね」
さっき、ちらっと見えてしまった。
見たことのある不動産会社のロゴが印字されたクリアファイル。
間取りが載った書類。
賃貸借契約書とか、そういうのだと思う。
ボールペンもあったし、書類に目を通したらあとはもうサインするだけ。
彼のことだから、それなりに条件が合えばすぐに決めてしまうだろう。
こだわりなんて元から薄い人だ。
だからこそ淡々と決まってしまうその早さに、私の心だけが追いつかない。
テレビの音は流れているけれど、妙に静かに感じる。
玄関に乱雑に脱ぎ捨てられたスニーカー。
リビングから暗い廊下に漏れる明かり。
嬉しいのか切ないのか、もうよく分からない。
────いや、たぶん私、ちゃんとまだ“嬉しい”。
「おかえり」
私がドアを開けるとすぐに、ソファに座る大地さんに先に声をかけられた。
今日も彼が帰ってきたっていうだけで、どこか安心してしまう自分がここにいる。
「ただいま」
変わらない声で返して、いったん寝室へバッグを置くとそのままキッチンに向かう。
その途中で、テーブルに広げられている書類が視界に入って足が止まりかける。
それを、なんとか気にしないように急ぎ足で通り過ぎた。
「今日ちょっと見なきゃいけない書類あってさ、」
なにも聞いてないのに、あちらから声が飛んでくる。
…うん、知ってる。
きっと急ぎでまとめなくちゃいけない書類だよね。
だから、気にも留めてないような反応をした。
「大丈夫ですよ。簡単に作っちゃいますね」
さっき、ちらっと見えてしまった。
見たことのある不動産会社のロゴが印字されたクリアファイル。
間取りが載った書類。
賃貸借契約書とか、そういうのだと思う。
ボールペンもあったし、書類に目を通したらあとはもうサインするだけ。
彼のことだから、それなりに条件が合えばすぐに決めてしまうだろう。
こだわりなんて元から薄い人だ。
だからこそ淡々と決まってしまうその早さに、私の心だけが追いつかない。
テレビの音は流れているけれど、妙に静かに感じる。