あと30日で、他人に戻るふたり
仕事は少し残業をして、クタクタにならないまでも週末の疲れが蓄積していた。

野菜は冷蔵庫にまだあったけれど、生鮮食品があまりなかったからスーパーに寄ることにした。


日が長くなっているから、この時間でもまだ人が多い。
値引きのお肉を狙って行ってみると、案の定だいたいが二割引になっていた。

同じく二割引のお刺身に惹かれながも、コスパで豚肉を選んだ私は、いくつかカゴに入れてレジに向かった。


道行く人達は、みんな帰宅途中なのか急ぎ足だ。
私も自然と早歩きでマンションへ歩いていた。


まだ、大地さんはあのマンションに帰ってきてくれる。
あの部屋にいてくれる。
あと数日でも、大切に過ごしていこう。


そんなことを考えながら、部屋に着いてすく。


私は絶望した。

玄関口に、折りたたまれた綺麗なダンボールの束。緩衝材とガムテープ。
よく目にする引越センターのロゴ。

玄関で足が止まってしまって、動けなくなった。


……やばい。感情がぐちゃぐちゃだ。

息を整えようとしていた矢先、奥から見慣れた姿と声がこちらへ近づいてきた。


「──あ、おかえり」

大地さんは、帰ってたんだ、くらいのテンションで私に声をかけてきた。

ちゃんと顔が見れなくて、なんとか返事だけはしなくちゃと反射みたいに返す。

「……はい、…ただいま」

「あぁ、ごめん。さっき届いたやつだ。邪魔だよね」


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