あと30日で、他人に戻るふたり
くよくよ悩んでいたはずなのに。
一緒に朝ごはんを食べたからなのか、なんなのか。

別に会話が弾むでも、なにか特別なことがあったわけでもないのに。


そのまま土曜日の午前中は動き出してしまった。

洗濯を回して、掃除をして、なんの変哲もない週末が回る。


なんとなく、食器棚の収納を見直そうと折りたたみの踏み台を出す。

ああでもないこうでもない、とあれこれお皿を取り出しては入れ替えしていると、食器の音が聞こえたからか大地さんが顔を出してきた。


「何してんの?」

「ちょっと食器の位置を変えようかなって…」

「あー…」

狭いキッチンに、またふたり並ぶ。
踏み台に乗っている私と、ただ立っているだけの彼の身長差が消えて、目線も並んだ。

「へぇ、大地さんの目線てこんな感じ?」

「うん」


なにも意識していなかったとかじゃない。

逆に目線が揃ったことで、存在がだいぶ近く感じてしまって、目が合いかけて私から逸らす。

彼にそれが伝わったかどうか分からないけれど、確認する勇気もない。


「なんでこんな身長に合わない食器棚使ってるの?」

私が出したお皿を彼が受け取りながら、いったんカウンターに並べていく。

その作業中に尋ねられて、以前住んでいたアパートのことを思い出す。

「うーん…、このメーカーの家具が可愛いなってずっと思ってて」

「うん」

「前に住んでたアパートはここより古くて、セキュリティーも甘くて、でも私の身の丈には合ってたんですよ」

「…うん」

「でもね、いつかもっとちゃんとしたところに住みたいなって思って。で、家具だけでも好きなもの買って、気分上げたくて」

「それが、これ?」


< 344 / 403 >

この作品をシェア

pagetop