あと30日で、他人に戻るふたり
唖然としているこっちの視線を無視して、彼は次々に私があまり使わなそうな食器を次々に上の棚へと並べて重ねていく。

みるみるうちにカウンターの食器が減っていった。


「これとか、これとか。美月がよく使う皿。このへんは下の方に入れたらいいよ」

「えーっ、これは?」

「これあんまり使わないでしょ」

持ち主のはずの私より、彼の方がお皿の使用回数を把握しているような。

あっという間に食器棚の整理収納が終わってしまった。


踏み台から降りて、再び食器棚の位置を確認する。
……悔しいけれど、ものすごく使いやすくなった気がした。

「どう?」

「…いいと思います」

「顔とセリフが合ってないな」


悔しさが顔に出ていたのかもしれない。
大地さんはちょっと面白そうに私を横目に見ていた。



ソファに戻ってダラっとふたり寝転んだところで、大地さんがスマホをいじり出した。

「…昼、どうする?」

「そうですねー、なにが食べたいですか?」

「ラーメン」


即答されて、思わず隣を見てしまう。

彼はその反応を予想していたみたいに、私に見えるようにスマホを画面を向けてきた。

よく見ると、近所らしい住所が記載された中華料理屋が載っている。


「食べる気満々じゃないですか」

「混んでるかな…」

私の返事をまだ聞いてないはずなのに、彼はもう起き上がって寝ぐせを押さえながらキャップをかぶっていた。

「早い!私まだメイクもしてないです!」

「えっ、メイクするの?髪も?」

「せめてメイクは最低限…」

必死の抵抗も虚しく、大地さんの無言の圧力に押し負ける。


服を着替えて、髪の毛だけ部屋で軽く結んで、もうノーメイクで行くことにした。

「一応、これでも乙女なんですけどね、私」

「ごめん。食欲に勝てない」

「これで篠原さんに会ったりしたら、ノーメイクだから立ち直れないです」

「大丈夫。……たぶん」


不安にさせる最後のひと言を付け加えられ、文句のひとつでも言いたくなったけれど。

それでもふたりで傘を持って玄関を出た。




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