あと30日で、他人に戻るふたり
洗濯を回したのか、大地さんが戻ってきてソファに寝転がる。
その手にはスマホはなくて、ただぼんやりとテレビを見ているだけ。

私も隣に座ると、すぐに話しかけられた。


「今日ってなんかするの?」

予定まで聞かれた。
ふっと笑みがこぼれてしまって、それを急いで隠す。

「なんにもしないです。スーパーに買い物行くくらいですかね」

「あー、俺パン屋行きたいから一緒に行こうかな」

「あそこずいぶんお気に入りじゃないですか」

「うん。ポイントカード作ってもらった」


どんだけ通うつもりなの。
…と、喉から出そうになった言葉を飲み込む。


どちらともなく、なんとなく出かける準備を始める。

この日差しは絶対にやばい、と私はちゃんと日焼け止めを塗って、軽くメイクをして着替えた。

あちらはTシャツにデニム姿になっていて、“出かける”感は出ている。

「大地さん、キャップは?」

「あー、うん」

ソファの背もたれに置いてあった黒いキャップを渡すと、彼は苦々しく顔をしかめるのだった。


「夏になると帽子さえも暑いんだよな…」

「でも直射日光よりはマシじゃないですか?」

私も今日はさすがにキャップをかぶっている。

「髪の毛、切ったらいいのに」

「やだよ。人に顔見られるじゃん」

「意味分かんない」


ごちゃごちゃと御託を並べながら、エコバッグをショルダーバッグに入れたのを確認して玄関へ向かった。



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