あと30日で、他人に戻るふたり
駅前のパン屋は、相変わらずこじんまりしていて静かだった。


大地さんはもうすっかり慣れたように店内を練り歩き、好んで食べている食パンを二袋つかんですぐにレジへ持っていく。

店内でどのパンを買おうか悩みに悩んでいる上品な奥様たちが、逆に浮いて見えるほど彼の買い物が早い。

「今日ポイント二倍だった」


やけに嬉しそうな大地さんが、パン屋から出てすぐに自慢するみたいに言ってくる。

「意外です。ポイントとか貯めるんだ」

「うん。初めて作ったよ、ポイントカード」

「それもすごい…」

「財布の邪魔だからな、カード類は」

そう言いながらもこのパン屋のカードは作ってるじゃん。
しかも、二倍で嬉しそうだし。


矛盾してることを言ってる自覚はなさそうなので、指摘しないでおいた。


日曜日の人通りはやっぱり多いけれど、スーパーは案外そこまで混み合っていなかった。

前にふたりで来た時とは全然違う。
ちゃんと吟味して食材を選べるくらいには、余裕がある。


「涼しいし、空いてる」

同じことを思ったらしい大地さんが、カートを押しながらキョロキョロと店内を見回している。

「もしかして、午前中だと空いてるんですかね?」

「あの夕方の時間帯がカオスってこと?」

「土日だとそうなんじゃないですか?」

言われてみれば、土日のスーパーは決まって夕方に来ていたから午前中に買い物に出かけたのは初めてだ。


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