あと30日で、他人に戻るふたり
なんでもない週末が、終わる。


湯船に浸かって、湯気が漂う浴室の天井を見上げた。

指折り数えて、今日って何日目だったっけ、と考える。
────二十七日目、か。

明日からは仕事が始まるから、気づけば彼はもういなくなっているのかもしれない。


なにもなかったわけじゃない。
この一ヶ月、私と大地さんはふたりで暮らした。

その事実だけはちゃんとある。

だけど、私たちを近づける大きな何かは起こらなかった。

それはたぶん、間違いなく。
彼のきちんと線引きしている性格が、大いに影響している。


私、どうして彼を好きになったんだろう。
べつにどこが好きだとか、どういうところがいいと思ったとか、なにも思いつかない。

彼が一番だと思えるものは、思い浮かべられない。

それでも、大地さんじゃないとだめだと思っている。


出ていったあとの生活を考えられなくなるくらいには、彼のことが好きだ。


ひと息ついて、お風呂から上がる。

脱衣所で、ランドリーラックをなんとなく見やった。
使いやすくするために彼が合理的に買ったそれは、もう私の生活の一部だ。


そのランドリーラックに使い終わったバスタオルを掛けてスウェットを着たあと、髪の毛を軽く乾かしてリビングへ向かった。


リビングでは、エアコンを効かせて大地さんがソファでゴロゴロしている。
先にお風呂に入った彼は、髪を乾かしていないのか濡れたまま。

彼は寝転がったまま、あの引越しの書類を眺めていた。


「先、寝ますね」

そう声をかけると、彼は起き上がってなにかを言いかける。

「……あのさ、」


手に持っていた書類が、無造作にテーブルに置かれる。

なんだろう、と足を止めたのに、彼はそこから何も言わない。


「──いや、なんでもない」

「……おやすみなさい」

「おやすみ」


短い会話だけ交わして、私は寝室へ入った。


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