あと30日で、他人に戻るふたり
「寝てます」

「目、開いてるけど」

「起こしたんですよ、大地さんが」

「ごめん」


全然申し訳なさそうに謝って、彼は寝室の入口で私の様子を伺っている。

「…ちょっと話さない?」

リビングに来て、という意味なのかもしれない。

散々、どうでもいい話はできるのに。
あらたまったような“話”は、今は無理だった。

「怖いです、話聞くの」

「怖くないよ」

「怖い」

「じゃあ入っていい?」

リビングに来てくれないなら、と彼が一歩寝室へ足を踏み入れてきた。


「ちょっと!だめですよ、侵入禁止の約束は?」

「しょうがないじゃん、美月が来ないから」


大地さんは怯む私を、なぜかじっと見つめてくる。
こんな時に、どうしてそんなに見てくるの。

「ひどい。嘘つき」

「なんで?」

「入らないって言ったのに」

「話くらいさせてよ」

「……だから怖いんだってば」

そう言った瞬間、私の手が彼に握られた。


初めて明確に手を握られて、今度はより強く心臓が跳ねる。

「ここを出ていくのやめるよ」


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