あと30日で、他人に戻るふたり
「……ワークショップ待ちの人、座れる場所あった方がいいのかなと思いまして」

「座れる場所?」

「はい。たぶん、付き添いの保護者の方って、待ち時間長くなると思うので。あと、子どもって途中で飽きちゃうから、少し動けるスペースもあると滞留しにくいかなって」

自分でも驚くくらい、言葉が止まらなかった。

「あと、この辺に案内サイン増やしたいです。初めて来る人が多そうなので、迷うと一気に混雑しそうで…」


施工の話じゃない。
納期でも、工程でもない。

ここに来た人が、どう過ごすか。

それを考えている時の自分が、たぶん一番自然だった。


『穂村さんって、“企画側”の視点強いよね』

前に竹中さんに言われた言葉が、ふいに頭をよぎる。


……ああ。私、こういうこと考えるの好きなんだ。

ただ問題が起きないように調整するだけじゃなくて、ここに来る人たちが“また来たい”と思える空間を考える方が、好きだ。


そう思ったら最近の違和感が急に腑に落ちた。



会議が終わって、資料を閉じながら小さく息を吐く。


────企画部。

前は、自分には関係ない場所だと思っていた。


でも今は、そこへ行ってみたいと思っている。

逃げたいわけじゃない。
ちゃんと、自分で選びたいんだ。


これからの仕事も。 これからの人生も。




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