あと30日で、他人に戻るふたり
並んで歯磨きをしながら、鏡越しに目が合った。

ずっと思ってたんだけどさ、と大地さんがシャカシャカ音を鳴らして紛れるようにしゃべる。


「バスタオル、買い足してもいい?」

「バスタオル?」

「今ギリギリ回ってる感じするし」

そう言われると、たしかに天気が悪い日なんかは乾くかどうか大丈夫かな、と思ったりする時もあった。

もともと一人暮らししていた私が持っていたタオルを彼にも貸していたようなものだ。
ずっと思っていたのかもしれない。

「そっか…、タオル系もっといりますかね」

「ハンガーも買おうかな」

「ですね」


“ふたりで暮らす”前提の話を当たり前にされる。
昨日の今頃は絶望の縁にいたのに、変な感じがした。


歯磨きを終えて、大地さんはリビングのエアコンを消していた。
そしてスマホとクッションだけ持って、私のいる寝室に普通に入り込んでくる。

────やっぱり、もうそういう感じ?


私だけが固まっている中、大地さんはクッションをベッドに並べていた。

そしてサイドテーブルに投げるようにスマホを置くと、先にゴロンと横になっている。

……なに、この、付き合って何年も経ってます感。


私もスマホをサイドテーブルに並べて置いて、とりあえず隣に寝てみる。

昨日はなにも思わなかったけど、──狭い上に、近い。


たぶん彼もまったく同じタイミングで同じことを思ったんだろう。

「……狭いか」

とつぶやいた。

「今日は俺、ソファで寝ようかな」


そう言われたらそう言われたで、そこはかとなく感じる寂しさ。
情緒が理性に追いついてくれなくて、考えるより先に起き上がろうとした彼のTシャツをつかむ。

やってから気づく、自分の行動の大胆さ。


言葉に詰まってなにも言わないでいると、大地さんは再び寝転がって

「ベッド、買い直す?」

と聞いてくる。


「……このベッドに思い入れはないです」

「じゃあ次の休みにでも見に行くか」


そのまま、私たちは眠りについた。



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