あと30日で、他人に戻るふたり
キッチンへ行くと、先に大地さんが食パンを取り出していた。

おっ、と思っているうちに、トースターへパンを入れている。
その顔は真剣そのもの。


「…今日こそは焦がさない」

「目を離したらだめです。ちょっとこんがりしてきたなーって時にすぐ取り出してください」

「よし」

謎の気合いとともにスイッチを入れ、そのまま身を屈めてひたすらトースターの窓を覗いている。


その間に、今日は私がコーヒーを淹れていく。
夏の間はたぶん、ずっとアイスコーヒーになりそうな気がして。

聞くこともせずに勝手にアイスコーヒーをコップに注いだ。


「あの、なんかこう…いい具合の時間に焼き上がりの時にパンッて飛び出てくるやつに買い替えます?」

あまりにずっとトースターを見つめているものだから、その姿に笑いが込み上げる。

「いや、それはいい。俺にもプライドくらいある」

「絶対焦がさない戦いがそこにあるの?」

「言葉にするとダサいな」

我慢してたのに、盛大に笑ってしまった。


いつか朝焼いてくれたのよりも断然ちょうどいい焦げ目の、美味しそうな食パンがテーブルに並んだ。

せっかくなので食パンにバターも塗ってみた。
ものすごい進歩な気がする朝。


「バターの破壊力すごい…」

「うまく焼けたご褒美です」

「俺、美月にうまく乗せられてない?」

「今頃気づいたんですか?」

────沈黙。


『今夜は、突然雨が降ったりするかもしれません。折りたたみ傘を持って出かけましょう』

テレビのお天気のお兄さんの声だけが部屋に聞こえる。


「折りたたみ傘ですって、大地さん」

「さすがにそんなアイテムはない」

「長い傘買ったんでしょ?次は折りたたみ傘なのでは?」


私たちはそんな会話をしながら、朝ごはんを食べ始めた。



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