あと30日で、他人に戻るふたり
仕事終わりに、いつもの最寄り駅ではない立川駅で降りた。
あまり来ることのない駅に来たのは、理由がある。


駅を降りて少し歩いたところにだらっと立っている大地さんは、おそらく暑さにイライラしている。

顔から苛立ちが伝わってくる。
ティッシュ配りの若いお姉さんが話しかけないほどには。


「大地さん」

「あ、おつかれー」

「お疲れ様です。すみません、ちょっと遅れちゃいました」

定時で上がれず、少し遅くなってしまった。


ちゃんと『遅れるからどこかで涼んでてください』と連絡したのに。

返信が一行。

『移動するのめんどくさいからここにいる』

彼らしくて笑ってしまった。


「夜になったのに暑い」

「夏は始まったばかりですよ」

「今すぐ冬になったらなあ」

「寒かったら寒かったで文句言いそう…」

まだ春夏秋冬を一緒に過ごしていないのに、なぜか彼の言動が目に浮かんでしまう不思議。


とりあえず郊外型の広い家具店へ足を運ぶ。
駅前のそこは、平日の夜なのに思ったより人が多かった。

モデルルームみたいな仕組みになりつつも、全部回ろうとするととんでもなく歩くので、かなり疲れる。

ピンポイントでベッドの売り場を目指した。


< 380 / 403 >

この作品をシェア

pagetop