あと30日で、他人に戻るふたり
結局、セミダブルというところまでは決まったものの、彼はやっぱり適当で。

「とにかく最短で届くベッドならどれでもよくない?」

この言葉があまりにも解せなくて、私は頑なに首を振った。

「大切な睡眠時間を確保するためのベッド選びですよ!最短とかそういう問題じゃないでしょ?」

「最短ですべてを手に入れられるベッドにしよう」

「フレームの色は白がいいです!あと、ベッド下収納!」

「俺は背中が痛くならないやつで、かつ最短配送日のものならなんでもいい」

「部屋全体とのバランスも見たいです。マットレスは柔らかいのはだめです」

「早く届くやつ」


もうダメだ、やつはそれしか言わないと見た。


私たちが一向にベッドを決められないので、見兼ねた近くにいた男性の店員さんが声をかけてくる。

「お客様、よろしければご相談に乗りましょうか」

たぶん、私たちの会話をずっと聞いていたんだと思う。
口元が少しだけ笑いをこらえている。

あまりに価値観の違うやり取りに、いつ声をかけようかと思っていたに違いない。


「最短で届くの、どれですか」

大地さんが急に自分が有利に動く方へ持っていこうとするので、私も割って入る。

「フレームは明るめで、下に収納スペースが欲しいんです。マットレスもあんまり柔らかいのは嫌です」

「……ええ、なんかずっとそれで揉めてますよね」

店員さんの秀逸な返しに、私は思わず大地さんを睨む。

彼は「俺のせいじゃない」と言わんばかりの表情でなにも言ってこない。


「とりあえずですね、ご要望に添えそうなものはいくつかあるんですけど…」

そう言いながら、店員さんが目星をつけていたらしいいくつかのベッドを私たちに案内してくれた。

「こちらとこちらは、アイボリーのフレームのベッドでして。マットレスも硬めです。それから、収納付きです」

「えっ、見た目がもういい」

食いついたのは、私だけ。

大地さんは冷静に店員さんに尋ねる。

「配送日は?」


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