あと30日で、他人に戻るふたり
ここで店員さんが、意味ありげにちらりと私の顔色を伺うように見てきた。

……嫌な予感。

「…どちらも、二週間後くらいの配送になります」

“ご愁傷さまです”と聞こえてきそうな声だった。


「ただし、」と店員さんはやけに声を張った。

「こちらの商品につきましては、ダークグレーでしたら木曜日のお届けになります!」


「ダークグレー!?」
「木曜日!?」

私と大地さんが同時に聞き返していた。

「やだ!そんな色!」
「それにします」

正反対のことを言われて、店員さんがものすごく困ったような笑顔に変わる。


「あのさ、色なんていいじゃん。落ち着いたダークグレーの方がよく寝られるよ」

「えーっ、このアイボリー可愛くないですか?」

「寝心地に可愛いもなにもない。非効率」

「でも!」

私たちの言い合いが終わらないと踏んだ店員さんが「お待ちください!」とまるで何かのドラマみたいに遮る。


「こちら、シーツやベッドカバー次第でかなり雰囲気変わります!」

「……えっ?」

「フレーム部分はそこまで見える面積も大きくないですし、アイボリー系の寝具を合わせるお客様も多いですよ」

「ほら」

急に勝ち誇った顔で大地さんがうなずくので、なんだか悔しい。


「でも、ダークグレーですよ?」

「逆に高級感も出ます。汚れも目立ちにくいですし」

「あと木曜」

「そこはもういいです!」


大地さんの即答に、店員さんがついに吹き出した。

「仲がよろしいですねぇ」

「よくないです」
「いいですよ」


また真逆の返事が重なって、私は思わず顔を覆った。

そんな私の隣で、彼がぽつりとつぶやく。

「木曜まで耐えるの長いな」


今はまだ、顔から手を離す勇気が出なかった。




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