あと30日で、他人に戻るふたり
「私も最初は、大地さんは案件が終わったら、出ていくんだと思ってました」
私がぽつりと返すと、大地さんが「ん?」とこっちを見る。
「最初、この部屋選んだ理由。言ってたの覚えてます」
「うん。ほんとにそのつもりだった」
言いながら、彼は少しだけ笑った。
もう今は、そんな未来は来ないって分かっているから、笑ってるんだとちゃんと思える。
夜風が少しだけぬるくて、遠くで電車の音が聞こえる。
私たちは並んだまま、ゆっくりマンションへ向かって歩いた。
「……でも、帰りたい理由ができたから」
ぼそっと付け足された声に、胸の奥がじんわり熱くなる。
どう返事をしたらいいか分からなくて。 代わりに私は、彼のTシャツの袖を少しだけつかむ。
大地さんはそれを見て、やわらかく微笑んでくれた。
マンションまでもうすぐという時、ぽつぽつと雨が降ってきた。
「あっ、天気予報当たってる」
朝のお天気お兄さんが言っていた、夜は折りたたみ傘が必要だという情報。
それを聞いてちゃんとバッグに入れていたんだった。
「大地さん、ちょっと待って。傘出しますから──」
言いかけたら、そのまま手を繋がれた。
びっくりして瞬きをすると、彼は雨から逃げるように私の手を引いて走り出す。
「傘、めんどくさい。走ろう」
「えーーっ、濡れちゃう!」
「もう着くよ、すぐそこだし」
「速い!無理!速すぎ…」
最後の方は息切れして、なにも言えなくなってしまった。
••┈┈┈┈••
私がぽつりと返すと、大地さんが「ん?」とこっちを見る。
「最初、この部屋選んだ理由。言ってたの覚えてます」
「うん。ほんとにそのつもりだった」
言いながら、彼は少しだけ笑った。
もう今は、そんな未来は来ないって分かっているから、笑ってるんだとちゃんと思える。
夜風が少しだけぬるくて、遠くで電車の音が聞こえる。
私たちは並んだまま、ゆっくりマンションへ向かって歩いた。
「……でも、帰りたい理由ができたから」
ぼそっと付け足された声に、胸の奥がじんわり熱くなる。
どう返事をしたらいいか分からなくて。 代わりに私は、彼のTシャツの袖を少しだけつかむ。
大地さんはそれを見て、やわらかく微笑んでくれた。
マンションまでもうすぐという時、ぽつぽつと雨が降ってきた。
「あっ、天気予報当たってる」
朝のお天気お兄さんが言っていた、夜は折りたたみ傘が必要だという情報。
それを聞いてちゃんとバッグに入れていたんだった。
「大地さん、ちょっと待って。傘出しますから──」
言いかけたら、そのまま手を繋がれた。
びっくりして瞬きをすると、彼は雨から逃げるように私の手を引いて走り出す。
「傘、めんどくさい。走ろう」
「えーーっ、濡れちゃう!」
「もう着くよ、すぐそこだし」
「速い!無理!速すぎ…」
最後の方は息切れして、なにも言えなくなってしまった。
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