あと30日で、他人に戻るふたり
「…美月!話が違う!」

めちゃくちゃ小声なのに、ドスが効いてる。

「話が違うもなにも。私、言ったよね?“会えば分かる”って」

「言ったっけ?」

「なんていうんだろう、優奈が思い描いてるような人じゃないの!」

「いや、あれはなくない?」

「ちゃんと整えようと努力はしたんだよ…」

「いつ整うの?」

「今日は整わないと思う。ごめん」


しょうもない会話をこそこそとキッチンで繰り広げる虚しさといったら。


キッチンでひとしきり話したあと、心を落ち着けてアイスコーヒーを手にしながらリビングへ戻る。
暑いし念のため、彼の分も持っていく。

テーブルにアイスコーヒーを置いて、まったく動かない大地さんに声をかけてみた。


「アイスコーヒー、置いておきますね」

「ありがとう」

「……大地さん、あの、友達が来てるので」

けっこう強めの力で、寝転がる彼の足をぐいっと引いた。

「せめて自己紹介くらいは。ね?」

「あー…」


たしかにそうか、くらいのテンションで大地さんは起き上がると、やっとスマホから手を離した。

ラグの上に座った優奈が、見定めるみたいに彼を一瞥する。

「初めまして。小林優奈です」

「藍沢大地です」


ここで、沈黙。
話がまったく続かない。

大地さんは役目を終えた、みたいな顔でまたソファに身体を投げ出してしまった。


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