あと30日で、他人に戻るふたり
お菓子とガムシロップを優奈のいるテーブルまで持っていくと、私たちの話を聞いていたらしい彼女がまた含んだような視線を向けてくる。

「さっきからどうしたの?」

「……いや、なんだろ、なんか、」

優奈にしては珍しく、ちょっと口を尖らせて不満そうな、それでもなんだか納得したような。
そんな絶妙なラインにいるような、なんとも言えない表情でテーブルに頬杖をついた。

「美月が気を許してるのは、めっちゃ伝わる」

「……え?どこが?」

「だって美月って、会社だといっつも誰かに気遣ったりしてるじゃん?……そういうのなさそうだもん、あの人に対して」


“あの人”と言われた張本人は、食パンを片手にキッチンから出てきた。

焼きもせず、加工するでもなく、そのままむしゃむしゃ食べながら。

どうやらお腹が空いていたらしい。


「せめて焼いたらどうです?」

「あのパン屋のこれは、そのまま食べてもうまい」

「私の友達いるのに」

「気配消してるから大丈夫」

「存在感すごいの、自覚してますか?」

「……体がでかいから?」

そういうことじゃないんだよなぁー!
たぶん、これは口から出てたと思う。


すると、隣にいた優奈が突然笑い出した。

「なんか分かったかも」


彼女の言う、“分かった”がこちらにはまったく分からない。

私と大地さんが不思議そうに優奈を見つめていると、彼女はまだ笑いがおさまらないのか目尻に涙をためて手をパタパタと振った。

「美月が、美月らしくやってるんだって安心しただけ」

「───そうかな」

「相性って分かんないもんだねー」


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