あと30日で、他人に戻るふたり
絶対に寝不足のはずなのに、家を出るのは私と同じ時間だった。

目が赤いような気がするのは、気のせいではないはず。


玄関に鍵をかけながら、待ってくれている彼に尋ねる。

「今日は早く帰れるんですか?」

「うーん、たぶん…」

「だめですよ。疲れたから早く帰ります、って会社に言ってください。倒れますよ」

「俺、倒れたこと一回もないよ」

「じゃあ今回初めて倒れるかもしれませんよ?」

「いや。倒れない自信がある」

なんだ、そのわけの分からない謎の自信。

そういう自分への過信が、限界を見えなくさせるというのに。


「昨日の呼び出しはなんだったんですか?」

「今やってる案件でトラブル起きて、システムエラー」


職業柄、私も“トラブル”だとか“エラー”だとか聞くと怖くなってしまうけれど。

とはいえ、大体は開発と営業に挟まれて悩まされることの方が圧倒的に多かったりする。
だから、彼とは大変さの質が違う気がする。


エレベーターに向かって廊下を歩いていたら、少し後ろでドアの開閉音が聞こえた。


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