あと30日で、他人に戻るふたり
金曜の夜は、道行く人達がちょっとだけ浮き足立っている。


会社から駅に向かうときも、電車に乗っていても、どこかざわついている。

みんな、“週末である”ということが一週間の疲れを発散させるための起爆剤となっているような、そんな感じだった。


金曜日は優奈と飲みに出かけることも多いけれど、今日は違った。

『マッチングアプリでいい感じになった人と会ってくる!』と、意気込んでいたからだ。


うまくいくといいな、と思いながら電車から降りて駅のホームに出た。




••┈┈┈┈••

今日は少し帰宅時間が遅くなってしまったので、駅から帰る途中にあるずっと気になっていた小洒落たカフェに立ち寄る。

テイクアウトできるロコモコ丼を注文し、それを手にお店を出た。


女性が作っているだけあって、ハンバーグだけじゃなく色とりどりの野菜も主役級に綺麗に散りばめられている。
お客さんに女性が多いのも、納得がいく。


やがてマンションが見えてきて、ふっと見上げる。


引っ越してきたばかりは、不安だらけだったけれど。
今は、たぶん違う。

どこかで“帰るのが楽しみ”な部屋になっている。


オートロックの自動ドアを抜け、エントランスに出る。
見知らぬ同じくらいの歳の女性が、ちょうどエレベーターを待っているところだった。

彼女は五階で降りていった。


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