あと30日で、他人に戻るふたり
私は八階で降り、奥の部屋を目指す。
鍵を取り出そうとして、あれ、と首をかしげる。

なんとなく、中に人の気配を感じてそっとドアに手をかけた。

すんなり開いて、ちょっとだけ驚いた。


────先に彼が帰ってきている。
こんなこともあるんだ。

そのままドアを押し開けると、玄関にいつも彼が履いているスニーカーが置いてあった。


「ただいま」

「おかえりー」

返事はすぐにリビングから聞こえた。


リビングからは明かりが漏れている。

なんとなく急ぎ足でリビングへ入ると、もう彼がソファで寛いでいた。
クッションをしっかり背中に入れている。

……スマホをいじりながら、ちらりとこちらを見た。


「遅かったね」

「…ちゃんと会社に言えたんですね、早く帰りたいって」


買ってきたロコモコ丼の袋をテーブルに置きながら言うと、「いや、」と短い返事。

「調整して、自分で切り上げた。まあ、来週に回してもいいのあったし」

この人は、自分のペースで仕事を切り分けられる人なんだ。

誰かに“こうした方がいい”と言われてそうするのではなく、自分の意思で。


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