あと30日で、他人に戻るふたり
洗面所でスムーズに準備を終えて、寝室へそっと戻った。


スマホが震えたので画面を見ると、同期の優奈からメッセージが届いていた。


『人生終了のお知らせ』

たった一言なのに狂気を感じるメッセージ。
これを送りつけてきたということは。つまり、そういうことだ。


私はベッドに腰かけて、しばし文面を考える。

今日はどのみち予定もなくて、部屋のダンボールを片付けて買い物にでも行こうと思っていた。

優奈のこの精神状態を加味すると────

指をスマホの画面を滑らせる。


『おはよう。今から会えるよ』


送信するとすぐに既読がつき、そして返事が来た。

『行ける』
『今すぐ出れる』
『待ち合わせどーする?』


三連投に、ふふっと笑ってしまった。

こういう時に呼び出せる相手がいるのは、悪くない。


『じゃあ私も今から出るね』
『とりあえず恵比寿行く』

そう送ると、即座に返信が来た。

『了解。アトレの前でいい?』


スタンプを押してスマホを置くと、急いで着替えた。

白いブラウスに、柔らかく落ちるベージュのパンツ。
仕事の日より少しだけ力の抜けた服を選ぶ。

緩すぎず、でもきちんとして見えすぎない、会社へ行くのとはちょっと違う服。

華奢なネックレスだけつけて、さっき整えた髪の毛はそのまま下ろしてバッグを持った。


リビングでは、まだ彼が寝ている。

声をかけずにそのまま部屋を出た。
ほんの少しだけ、振り返りたくなったけれど。




••┈┈┈┈••

< 91 / 166 >

この作品をシェア

pagetop