あと30日で、他人に戻るふたり
一度落ち着いたところで、テーブルの向こうで肩を落とす優奈を眺める。

「昨日会ったマッチングアプリの人?あんまり良くなかったの?」

「良くないどころじゃなかったの!」

「顔?」

「顔は完全に加工だった。盛りすぎだし、原型なし!」

スマホを取り出して、ほら!と写真を見せてくる。
おそらくアプリ上でやり取りしている時の、相手のプロフィール画像だ。

スーツを着た爽やかな短髪のイケメンが、青空の下で微笑んでいる。
これが加工だなんて、世の中って本当に怖い。


ただ、恋愛において多少嘘をついてでもよく見られたいとか、無理をしてでも会ってみたいとか、そういう気持ちで必死なのも、なんとなく分からなくもない。


「顔なんてさ、性格が良ければどうとでもなるんじゃないの?」

「写真と違うとかそういうレベルじゃないの!それに、性格もヤバかった!会話が全部ズレてんの!」

「どういうこと?」

「“趣味はカフェ巡りです”って書いてたのに、“コメダしか行きません”って言われた!」


面白すぎて思わず吹き出してしまった。

笑っている私を見ているだろうに、優奈は構わずに続ける。

「カフェだよ、たしかにコメダはカフェ。コメダ、私だって好きだよ。でも、そうじゃないの!巡ってもないし!」

「全国のコメダを巡ってるのかも…」

「そんなのやだ!」

「仕事は?高収入で探してたんじゃなかったの?」


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