あと30日で、他人に戻るふたり
端的にしか彼女の話を聞いていなかったので、覚えているワードを口にしてみた。

アプリでマッチングするために、色々と条件を出していたはずなのだ。
優奈の条件は、それなりに色々あったような気がする。

『高収入』だけは記憶にあった。


軽い気持ちで聞いただけなのに、優奈がぎろりとこちらを睨んできたのでなにか失言したかと顔色をうかがう。


「年収はね、確かにすごかったの。そこは認める…」

「うん、いいじゃん」

すごかったなら、なにがいけないの?
と、首をかしげていたら。

優奈が昨日の出来事を思い出したのか、わなわなと震え出した。


「でもさ、“無駄な時間は削りたいタイプなんで”って言われて…」

「────うん?」

「“デートってコスパ悪くないですか?”って!!」

「コ、コスパ?」

「“どこにご飯食べに行きますか”って聞いても、“なんでもいいよ、お金出すから”って!!会話する気ある!?って思わない!?」

「……あー……」

聞いていて、形容しがたい微妙な気持ちになる。

「“なんでもいいよ”って言う男ってさ、絶対つまんないよ!!私に興味ゼロじゃん!丸分かりじゃん!!」


優奈の言いたいことは分かる。
分かるけど、どこかで引っかかる。

たしかに、会話を放棄されるのは嫌だ。
でも────


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