あと30日で、他人に戻るふたり
リビングをそっとのぞくと、まだ彼は寝ていた。

朝とほとんど同じ体勢で、少しだけ安心する。
違うのは床に落ちかけている毛布だけ。

出かける前と同じ、カーテンは閉まったまま。


……ちゃんと寝れてるんだ。

それだけで、なぜかほっとした。


起こさないように足音を消して歩いて、寝室の前まで来る。

『気を遣われる方が気を遣う』って言われたから、いつも通りにすればいいのに。
それでも、やっぱり私の立てた物音で起こしてしまうのは申し訳なくて。


そこでふと気づく。

彼も、同じなのかもしれない。

最初に生活ルールを決めた時に、帰ってきたら声をかける、なんて言ったけれど。
夜中や朝方に帰ってきて、ドア越しに声をかけるのは、きっと躊躇うはずで。

だから、あの人は何も言わなかったのかもしれない。


……なんとなく、分かる気がした。


寝室のドアを閉める前に、もう一度だけリビングを振り返る。

……まだ、寝てる。



私は音を立てないように寝室のドアを静かに閉めた。


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